2012年12月24日月曜日

We wish. vol.3







ヒョクチェは一階への階段を下り、シウォンの居るであろう会議室へと急ぐ。

まだ居ろよ、頼むから…。

そう思いながら、何故か爆発しそうにドキドキする心臓を押さえつける。

なんで、こんなにあいつの事となると…くそ。

悪態を吐きながら頭を振って、最後の角を曲がる。


———その時。

「!?」

突然壁にぶつかって、ヒョクチェは死ぬ程驚いた。

「Merry Christmas」

ぶつかったと思ったら、思い切り抱きしめられる。

自分が壊れてしまうんじゃないかというような馬鹿力で、髪に手を差し込まれ
掻き乱された。

その腕は、求めていた大好きな腕で。

いつも俺が幸せになれる、つい顔が綻んでしまう愛撫をくれる腕で。

———心ごと、抱きしめられた。

























We Wish.







♦Together






「シウォン…」

「会いたかった、ヒョクチェ。」

「会いたかった…」

ヒョクチェを抱きしめながら、シウォンの身体の緊張が抜けて行く。

会いたかったよ、と繰り返しながら、ヒョクチェの首元に数回軽いキスを落とした。

「———ほんとに?」
抱きしめられたまま、ヒョクチェが小さな声で尋ねる。

「神に感謝してる。ここで会えて。」

「…俺も、お前が居るって聞いて———飛んで、来た。」
言いたく無さそうな、そんな調子で伝えてくれたヒョクチェの本心。























堪らなくて、堪らなくて、誰が来るか分からないのに二人は自然と唇を合わせる。

ここに居ると、やっと会えたと。

確かめ合うように、柱の影に身を寄せて。

ヒョクチェは、泣きそうな顔でシウォンの舌を追って来た。

シウォンは、細いヒョクチェの肩を抱いて、もっと深く繋がろうと
片手で顎を掬い、ゆるりとヒョクチェの唇全体を己の唇で覆う。

「…ん、ぁ…シ、ウォナ…」

ポロリと、一粒ヒョクチェの瞳から涙がこぼれる。


安堵の涙?

———積もった寂しさが溢れ出した?


シウォンは嬉しくて、切なくて、でもどうにか
今すぐここで押し倒してしまいたい衝動をどうにか抑えた。

この柔らかい唇を噛んで、舐めて、今度は快感で泣き出すまで
虐めてみたい。



一生離れられないように

俺だけの物にしかなれないように

身体の隅々まで俺を求めるように

今すぐ密の味を覚えさせてやりたい。



———でも。


シウォンがそっと、唇を離し、頬に、耳にキスをして
それから首だけを離し、お互いの顔の見える程の距離を取る。

切れ長の目の周りを赤くしたヒョクチェが、可愛くて、苦しくて
一生見ていたかった。

それでも、時間には限界があって。


「———あと、20分と少ししか、ここに居られないんだ。」

「うわ…一瞬じゃん。」
少しがっかりしたように、ぐす、とヒョクチェが首を項垂れる。

「ちょっとベランダに出ないか?」
目線で、シウォンがベランダを指す。

疲れている筈のシウォンなのに、あくまで彫刻美男は彫刻美男で。
美しい血色の顔に、大きなえくぼが出来て微笑んでいた。

この完璧な美しさの前には、どんな選択肢だって、Yesしか望めない。



そのままシウォンの手首を掴んで、ヒョクチェはベランダに付いて行く。
片手は何かを隠しているように、ヒョクチェを離してからその姿を現さない。


何だろうと思い、ヒョクチェがそれを見ようとすると
駄目、というように身体でガードされた。

「何だよ。それ、何持ってんの」

「プレゼント。」

「え、マジ?俺今持って来てない」
シウォンにあげようと思っていたプレゼントは、こんな予想外の展開に
備えられていなくて、持って来ていなかった。


残念そうに肩を落とすヒョクチェに、シウォンは気にしないで欲しいと囁くと
ベランダのガラス戸を閉め、手すりに凭れて両手をまた背後に隠す。


「ちょっと、色々確認しておきたい事があって」
そう言って、何から始めようか少し考えている顔をした。


「何?」


シウォンが、少し複雑そうな、言いにくそうな表情をした。


「何だよ」
時間がないのに、もうクリスマスは今しか会えないのにと思うと
少し苛立ち更に不安が手伝って、ヒョクチェの言葉に柔らかい棘が混じる。


「怒るなよ。」


「怒ってない。」


「…なあ、ヒョクチェ、クリスマスは———」
シウォンが、意を決したように口を開いた。



「———やっぱり、家族で過ごす物だろう…?」







To be continued...








※Special Thanks to 唄様!!
イラストを提供して下さった唄様に、皆様拍手とコメントをお願い致します♥
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