2012年12月9日日曜日

Happy Together vol.21








Happy Together vol.21














ピンポーン…


ピン、ポーン…



まだ霞がかかった様な頭に、玄関のチャイムの音が響いた。



ドンへは、薄く目を開け、月明かりが指していた窓を見上げる。

壁は、優しいオリーブ色。

前に見た時には気が付かなかった。

そして今は、窓の向こうは真っ暗。

まだ、夜?

時計に目をやると、とうに針は20:00を指していて。

朝の八時の筈は無く。

———ああ、こんなに寝てたのかと。

そういえば、ソンミンとの行為に耽り始めてから、外が明るくなって
また暗くなったような、そんな気がする。

いつ終わり、いつ寝たのかも分からない。

ふと横を見ると、ソンミンが天使の様な顔をして眠っていた。

首元には生々しく、自分のつけたキスマークが赤く花を咲かせている。

ドンへはなんだか、ぼうっと、した。

———今日は、ヒョクチェの姉さん達が帰って来た筈だな。

うまく、それまでに部屋片付けたり、出来たかな。

手伝ってやれば良かった。

そんな事を思い、ハッと、自分が何故ここに居るのかを思い出す。


——俺の馬鹿。


そう唇を噛み締めていると、チャイムを鳴らしていた人物が痺れを切らしたように
今度は扉を叩いた。


バンバン、バシッ


「居るんでしょう、ヒョン!開けて下さいよ。」


透明感のある、なんだか甘ったるく、気だるい声が聞こえた。


ビクン、とソンミンが飛び起きる。


どこか怯えたような目を扉へ向けると、ドンへを見て小声で
「なにか答えた…?」
と聞いてくる。

「ううん、何も。」
そうドンヘが言うと、ふうっと安心した様に目を閉じ、息を吐く。

人差し指を立てて、静かにしててと言う風にジェスチャーをし
ソンミンはシーツを身体に巻いて、そっとベッドから出て行った。

また、玄関から男の声がする。

「ヒョン、意地悪してるんですか?ワインを持って来たのに…開けて」

甘えたような、声だ。

恋人かなにかだろうか?

「キュヒョン…。」
ソンミンは、泣きそうな声で、玄関の扉に向かって呟く。

「ほら、やっぱり、居るじゃないか、ヒョン。」

「ごめん、無理。帰って。」

「なんで?そこに”ドンへ”が居るの?」
あざ笑うような声の調子で、訪問者は言い放つ。

自分の名前が出て、ドンへは死ぬ程驚いた。

…誰?

「キュヒョナ!違う、違うよ。でも、もう君とは会いたくないんだ…」

「…そう…へえ。…別の欲求の処理相手でも、見つけた?」
急に声の調子が、冷たいものに変わる。

「何で…そんな…とにかく…もう、会えない。会っても、話したくない。」

「あんた大学も休講して。病気なのかと心配して来てやったのに
 酷い対応ですね。」


「…っ。ありが…とう。でも、もう僕の事なんか気にしないで。」
ソンミンは、決意した様に言い返す。


「そうですか。じゃあ、もういいです。」
聞いているこちらが、心にナイフを刺されるような、冷たい声。

「ああ、ワインは、プレゼントに置いて行きますから。…新しい相手とでも
 飲めば?」
ガシャン、と音がして、ワインが玄関に置かれる。

ソンミンは、シーツを握りしめ、泣きそうな顔をしていた。

カン、カンと階段を下りて行く足音が聞こえる。

ソンミンの肩が、遂に震え始めた。


ドンへは、後ろから静かにソンミンに近付き、そっと抱きしめる。

ハッとした様にソンミンは顔を後ろに向け、ドンへを見ると「ごめんね」と
呟いた。


事情は、聞かない。


人には、色々なことが、あるから。


ただ、温もりは少しだけ、悲しみを癒してくれる。

そうソンミンが教えてくれた。

首筋に撫でるようなキスを落とすと、ソンミンが振り返り、縋り付く様に
ドンへの胸に顔を埋めた。

そのまま、また俺達はその場に崩れ落ちて。

俺は、ヒョクチェを想いながら。

ソンミンは、去って行く誰かを想いながら。




———深い海の底に、溺れて行った。












=========================================














シウォンは、オレンジの街灯がともる人気の無い道で
明るくブラインドの開け放たれたダンススタジオの様子を眺めていた。


音楽は聞こえないけれど、きっと軽快な、アップテンポの曲で
レッスンしているのだろう。


子供達が真剣な顔で、ステップを踏みながらヒョクチェの動きを追う。


ヒョクチェの方も、子供達と向き合い鏡の様に動き、細かな指示をしていた。
その目は、子供達全員の動きを見逃さない。

手拍子をしながら、子供達にだけ踊らせ、ゆっくりと振りをチェックする。

その細い身体を包む薄いイエローのTシャツと、大きめのサイズのグレーの
スウェットが、汗で身体に張り付いていた。

パチンパチン、と大きく手を叩き、子供達の注目を集める。

自分の顔を指差し、視線の動かし方を説明しているようだった。


シウォンは感心して溜め息をつく。


ダンスは、こうやって作られるのか。

手足を動かしているだけではないのだ。
表情、目線、手足の筋肉の微細な動きで表現する音の波。

音が聞こえないのに聞こえているような気がするのは、それらの要素が
混じり合って、そう思えてくるのだろう。

子供達の無邪気な表情が、踊り始めると陶酔したような真剣なものに変わる。
プライドさえ感じ取れる。

———そして。

彼らの中心で踊ってみせるヒョクチェの、子供達よりも楽しそうな表情は
シウォンの胸を予想以上に締め付けていた。

シウォンが簡単に抱き上げることのできる、あの華奢な細い身体が——
あんなにも力強く、滑るように動く。

筋肉が波打って。

4つ打ちやブレイクビーツの波動を感じた。


なんという綺麗ないきものだ、と胸が騒ぐ…。


金髪を振り乱して、今まで想像もつかなかった程に格好良く踊る。


体を捻りながら横へ飛んだかと思うと、床に崩れ落ちたかのように見せて
両腕をフロアにブリッジのようについて止まる。

そしてそのまま片足を伸ばし、その足で蹴り上げるように跳ねて飛び起き
今度は180度足を開脚して、落下するようにフロアに着地をした。


生徒達が、おお、と驚きの表情で眺め、拍手をする。

シウォンも、無意識に拍手を飛ばしていた。

ちらりとヒョクチェが外に目をやったように思う。
そしてスタジオの時計に目をやり、ハッとして手を叩いて何かを告げると
子供達がお辞儀をして一人、また一人と汗を拭きながら教室を出て行った。
レッスンの終わりが来ていたようだ。


子供達の迎えの車がちらほらと、現れては去って行く。


シウォンは美しいヒョクチェのダンスを反芻する。
感動で鳥肌の立つ自分を諌めようと、涼しい風を浴びるためジャンパーを脱ぎ
腰に巻き付けた。




まずい、と思う。



空を見上げ、シウォンは月を睨みつけた。





———月よ、君は知っているかい、彼がこんなに魅力的だと。

知らないのだろう?

知っていたら、とっくに君はそんな所で夜を照らす事をやめて
ヒョクチェだけを照らすために地上に落ちて来てしまっている事だろう。





ああ。




神様、あなたは残酷だ。

敬遠で誠実な、あなたの子に、こんなに切ない恋をお与えになるとは。

苦笑いをして、シウォンは顔をゴシゴシとこする。

欲しい、彼が欲しいと、心が暴走してしまう。




最後の、送迎の車が暗い夜道へと消えて行く。
スタジオから、ヒョクチェの姿も見えなくなった。


急ぎ足でシウォンは入り口へと向かい、スタジオの中へと入る。

松葉杖なしに無理に歩かせている足が、チクリと痛みを訴えた。

それでも歩みを止められず、廊下の角を曲がった先にあるホールを目指す。
その時、足音が聞こえたような気がした。

———そして、こちらへ向かって歩いて来ていたヒョクチェと
思い切りぶつかった。


「うわっ…!シウォン!」

「ヒョクチェ」


シウォンは、勢いに任せ、それでも遠慮がちにヒョクチェを抱きしめる。

「ちょ、」

「ちょっとだけ…このまま」
シウォンはヒョクチェの耳元に顔を埋め、目を閉じた。



「やめろって、オーナーが来たら!」
腕の中でヒョクチェが身じろぐ。

「あと10秒だけ。…お疲れさま、ヒョクチェ。」
そう言って暫くすると素直に身体を離して、乱れた金髪にそっと触れた。


「あ…ああ。有り難う。」
髪を直しながら、ヒョクチェは少し俯いて、お礼を言う。





ねえ、ヒョクチェ。
その少し赤くなった頬とか、その緊張した仕草とか。



———俺は少しだけ…ほんの、少し…期待を持ってしまってもいいかい。





「…会いたかったよ」
試すように、そう、言ってみる。



君も同じように思っていてくれたなら、俺は今、天にも昇れる。
もしそうなら、どうか、そう言って欲しい。



お願いだ。



ヒョクチェの反応を待つように、シウォンは大人しく待った。
首を傾げて、俯いたヒョクチェを眺める。


「…」

「何?」
何かを小さい声で呟いたヒョクチェに、シウォンは優しく尋ねる。

「…も。」

「俺、も、会いたかっ、た。」


途切れ途切れに、俯いたまま、ヒョクチェはそう言った。
そして、反応のないシウォンを伺うように顔を上げると、ぎょっとする。


シウォンは口元を押さえて、目を見開き、まるで世界で一番驚いたような
顔をしていた。



「…シウォン?」


「……」



完全に、フリーズしている。
その反応に余計に当てられて、ヒョクチェはゆっくりと真っ赤に赤面した。


「…んだよ!!言わなきゃ良かった!!ば、馬鹿にしてるんだ、」


シウォンは間髪を入れずに、先程みたいな伺うような物ではなくて
丸ごと包み込むように、思いっきり、大事に、大事にヒョクチェを抱きしめた。


「…嬉しい。」
そう言うシウォンの身体から、少しだけ力が抜けるのを感じる。


ヒョクチェは、シウォンの胸に思い切り埋まり辛うじて息は出来ることを感謝した。


なんだか押し返しもできずに、そのまま諦めて身を委ねる。


そして、喉を撫でられた猫のように、力を抜いて、目をきゅっと瞑った。






「…何してんだ?」






ハッとしてシウォンをぐっと引き剥がし、後ろを振り返ると
ポカンと口を開けてオーナーが立ち尽くしていた。


「————あ…!え、と」
言葉に詰まり、ヒョクチェは眩しそうな顔をして誤摩化すように笑う。


シウォンは、我に返って浮かせた手のやり場に困ったまま、凍り付いた。


「はぁん。…そう。へえ〜…そういう事。」


オーナーのシンドンは、顎に手を当て、値踏みするようにシウォンを眺める。

何をどう説明したら良いか分からずに、口をぱくぱくしていると
オーナーはスタジオの鍵をちゃりちゃり鳴らしながら二人の横を
すたすたと通り過ぎ…

通り過ぎざまにシウォンの手に鍵をちゃりん、と落とした。

「君が、こないだのキスマークの主?」
そう言ってにやーっと笑い、シウォンに向かってウィンクをする。

「ちがっ…」
ヒョクチェがより一層赤くなって否定しようと口を開いたが
同時にシウォンが、通り過ぎようとするシンドンの腕を咄嗟に掴んでいた。


「違うんです。説明させて下さい、あれは俺が無理矢理ヒョクチェに…」

「——俺の片思いなんです。今もお願いしてああさせて貰っていて」


慌ててそう弁解するシウォンの口に、オーナーはシッと人差し指を立てる。

「言うな。野暮だぞ。」
芝居がかった調子で、眉を顰め口元には笑みをたたえてそう言い放つ。

「俺は何にも咎めないし、誰にも言わない。その代わり…」
少し振り返り、ヒョクチェを見やる。

「はい…」
ヒョクチェはごくりと唾を飲んだ。


「その代わり、冷やかす!!」


「ちょっと、オーナー!」
ははは!と楽しそうに、弾みながら出口へと去っていくシンドンに
ヒョクチェは首をのけぞらせ、額に手を当てながら叫んだ。


「グッドラック、Mr.Perfect!!」
恐らくシウォンに宛てたであろう捨て台詞を残し、バタン、と扉は閉じられた。


「…あ〜…」


「すまない…」
がっくりとシウォンが肩を落とし、ヒョクチェに謝った。
Mr.Perfectが形無しだ。

ヒョクチェは、首をポキポキと鳴らしながら、ふう、と息をつく。


「まあ、見られちゃったもんは、仕方無いや。」

「しかし…」

「別に悪い事はしてないだ…」
ヒョクチェは落ち込んだシウォンを改めて見て、なんだか急に悪戯な気持ちになった。
ちょっと、いいかも。


「…ああ、やましいって事は、悪い事するつもりだったんだ?」
綺麗な赤い唇を吊り上げ、ヒョクチェは意地悪な微笑みを見せる。

「ヒョクチェ!」
困ったようにシゥオンが腕を広げてリアクションをした。

「シウォン、何する気だったんだよ…」
ヒョクチェがショックだ、と言うように大袈裟にため息をつきながらシウォンに
近付いて行く。


「俺は本当に、ただ——…」


「あ、そう。俺はあのままオーナーが来なきゃこうするつもりだった。」
そう言ってヒョクチェはシウォンの肩に両手をかけると
背伸びをして唇を薄く開けた。

「ヒョク…」

シウォンが言い切らないうちに、ヒョクチェの唇はシウォンの唇に合わせられる。

柔らかい、ふわりとした感覚がシウォンの体中を満たして行った。

「…ん…はぁ…。」

ヒョクチェの微かな息遣いが、誰もいないスタジオに響く。
シウォンはそっとヒョクチェの顎から後頭部を両手で包み込み、キスに応えた。

「…っ」
夢中でキスを交わしていると、無理をして立ち続けていた足に激痛が走る。

「あ…松葉杖、なんでしてないのあんた…」

「平気かと思ったんだが…」

「馬鹿だな。来いよ。」
ヒョクチェがシウォンの手を引いて、メインのホールではない、小さな部屋へと
連れて行く。

そこには、筋トレに使うトレーニングマシーンが数台置いてあった。
その中の、ゆったりと腰をかけて使うタイプのレッグプレスにシウォンを座らせると
ヒョクチェはその膝の上に跨がって座る。


「ヒョクチェ、これは、ちょっと…!!」
シウォンが嬉しそうに、でもさすがに戸惑ったように両手でヒョクチェを遮る。


跨がった姿勢の侭、ヒョクチェはシウォンの耳元に口を寄せると
「———夢の中で、こう、したかったんだ。」
と、呟いた。


朝の、砂漠の夢の話をシウォンは思い出す。


「触れたいのに、触れさせてくれなくて。——ただ、良いように、犯されて。」

「それでもあんたの事、俺、死ぬ程愛してたんだ。」

「———聞いてくれる?」


「勿論だよ。」
シウォンがそう答えると、まるで現実にあった事のように
ヒョクチェは語り始めた。



灼熱の砂漠の国の…悲しい夢を一通り話し終えると
夢の名残か、精一杯に何かを埋めようとしてか慣れない素振りで縋り付いてくる。

「…それはただの夢だ。忘れるんだ、ヒョクチェ」
シウォンは、ヒョクチェの腰を抱き寄せ、くしゃっとした金の髪を撫でる。

「そう…夢。ただの夢。」

「それでも…。」

ヒョクチェがシウォンの頬に触れた。
その艶っぽい、切れ長の瞳を眇めるようにしてシウォンを見る。


「シウォンも、ドンへも、結局は優し過ぎて、俺を甘やかしやがって。」

「優しさを履き違えて、俺を置いて行こうとするんだ。」

「ヒョクチェ…」

「勝手に、俺の気持ちも知らないで。そんなのって、ある?」


なんだか、気付いた時にはシウォンまで現実に起きた事のように
感じ始めていた。


「すまない——」

「!!あ…、ごめん、夢の話なのに、ついなんか」

「いや、夢だけの話じゃない。起こりうる…話だ。」
シウォンが真面目な顔で言う。

「君のためだと、気持ちを押し付けて、周りに回って辛い思いをさせてしまう。
 起こりうる話だった。」

「…いやだよ。そんなの。」

「——誓う。絶対そんな事は起こさないと。」


ヒョクチェは、ふ、と笑い「俺ってめんどくさい」と呟いて
シウォンに跨がったまま上半身だけを離し、仰け反るように身体を横たえた。


「——なんか辛かったんだ。」
シウォンは、そう言うヒョクチェを愛おしそうに眺める。


「ごめんな。」
俺が、勝手に見た夢なのに。
と、消えそうな音量でヒョクチェは言った。

「でも…俺は、夢の中の俺がちょっとだけ羨ましいよ。」
シウォンは、にっこりと笑いヒョクチェの足に優しく手を這わせて言った。

「酷い事したって、君に、愛されていたんだろう?」

「そ…うだな、あれ…」
う〜ん、とヒョクチェは何かを考えている。

「なんだ?」

「俺って、今、あんたの何なの?」

「え?」

「や、ちょっと混乱して。」

シウォンはもっと混乱する。
俺の片思いで、ヒョクチェに好きになって貰おうと必至で足掻いている所で。

でも、今現在、ヒョクチェに跨がられてるのも事実で。

「———俺が、逆に聞きたい…」

シウォンが眉間に手を当てて、難しい顔で呟いた。

「えー!?」

「俺は、君の事が好きだ。愛してる。今すぐ欲しい。でも」

「————君は、どうなんだ?」

答えは、ゆっくり待とうと思っていた。

でも、君がそんな事を言うから。

こんな事をするから。


なんだか勘違いしてしまいそうになる———


ヒョクチェが、口を尖らせて目を細め、寝そべったままこちらを見ている。

そして、ヒョクチェがスッ、と手を伸ばして、「起こして」と言うように
手を揺らした。


シウォンは、なんだかスローモーションのように、その白くて綺麗な腕を掴み
そっと助け起こす。


また最初のように、この上なく扇情的な体勢に逆戻りした。


お互いの腹と腹が密着し、ヒョクチェは片腕をシウォンの首に回す。

そしてもう片方でシウォンの顎を掴んで少し上を向かせると
触れてしまいそうな距離まで唇を寄せて、シウォンの目を見つめてくる。

———挑発。

二人の視線は、お互いの睫毛の一本一本や、光彩の模様が見えるほど
絡み合った。


それは——
熱っぽくて、ロマンチックで、永遠に見つめ合っていたいような
快楽を秘めていて。


まるで、獣が獲物を見つけたときのデモンストレーション。
己の持つ力を見せつける、艶やかな自己顕示。


ヒョクチェがついに、その形の良い唇を開く。

甘い、柑橘系の吐息が、シウォンの唇に温かくかかった。

そして。



「———秘密。」


「な…」



くくく、とヒョクチェは笑うと、思い切り激しく唇を合わせ、シウォンの
舌を、舌で搦めとった。


「っ…ひょ  クチェ!」

「俺…これ…すごく、好きみたい」
唇を少し離しては、言葉を少しずつ切り離して呟く。

「シウォンの事は」
歯列を舐めて、思い切り舌にかぶりつく。

「…まだ分かんない。」
舌を使い、腰を押し付けて熱烈に求められる。

「———事に、しとく。」
ニヤリと、シウォンの好きな、悪い猫の瞳になった。

「っはぁ…」
ヒョクチェの息遣い、甘い唇、熱い身体を全て感じながら
シウォンは参ったと思いながらも、ずるずるとヒョクチェのペースに流された。

愛おし過ぎて、こちらの身体が燃え尽きてしまいそうだった。




…これが、もしも、わざと気持ちをはぐらかしているのだとしたら。


まだ、俺の気持ちを信じきれずに、探っているのだと、したら。



———君の夢の話じゃないが、俺は、君だけなんだと。

何があっても、忘れないでいて貰えるには、どうしたらいいのか。

俺が———
君を置いて去るなどという不安を打ち捨てて貰うにはどうしたらいいのか。


誰がなんと言おうと、この自分の口すら、なんと言おうと
俺はこれからずっと、君だけを見つめていて。

君を愛していると何千回、何万回も伝えた後も。

俺の胸の中が皆、燃え尽きて、乾いた唇がすり減ってしまったとしても。
俺の唇が冷たくなっても、また、熱く叫びながら、君を探す。

どれだけの時間が流れても。

そうして、また生まれ変わって。それでも尚、君だけだと。


そうやって今も君に出会ったのだと、そう思う。


次の人生でも、必ず君なんだと。

どうやったら、伝わるのだろう———…







To be continued...



 





※最後の数行は、It's you(ノラゴ)からの参照+ちょっとアレンジです。
あまりにリンクした内容だったので…
そして、はい、シウォンさんが意外に鈍感であったという残念な事が判明しましたね。
鈍感ですね。この紳士!
でも、恋は盲目ですからね。仕方無い。

ヒョクちゃんも恋してるようですけど、愛とか恋の境目は未だ分かっていないようですし。
ああ、淫乱な子猫ちゃん、万歳!

↓今回のイメージの悪猫ヒョクチェ。(GIFが動かない現象が発生しているのですが
動かない場合クリックして頂けると美味しいヒョクが見られるかと思います。汗)














私、書きながら登場人物の個性を失わないように常に出演している人物の画像一覧(数百枚)
を眺めながら、表情等をリンクさせて書いているのですが。
どの写真を見ても卑猥過ぎてどうしようもないヒョクチェに、脱帽しました。

ちなみにヒョクチェさんは”イスカランディア”の夢をご覧になったようです。
イスカを読んで無い方々には意味が分からないかもしれなくて、本当に申し訳ありません。
読んでいなくてもふわっと分かるようにはしたつもりなので
ご勘弁下さいませ…。

そして本日中に、最近LINKさせて頂いた素敵なLINK先のご紹介や
ウォンヒョク近況観察等を載せたいなと思っているのでまた、お時間があられましたら
是非寝る前にでもちょっくらお覗き下さいませ。
ではでは。

本当に、無駄に長くて申し訳ありませんでした。
お休みしていた分のHappy Togetherウォンヒョク欲が滾ってしまった次第です…。
しかしいつヒョクチェはロストバージンするんでしょうね☆
末恐ろしい男の子です!


Katie



10 件のコメント:

  1. Katie様
    21UPありがとうございます。
    こんなに早くあげていただけるとは!

    ヒョクチェさん、また、猫力発揮ですね!
    シウォンさん、あきらめて翻弄されてください(笑)
    でも、なんでしょう。うらやましい。。

    そして、ドンへさん、ソンミンさん、キュヒョンさんの
    その後も気になります><

    返信削除
    返信
    1. >がみん様

      21まで早速見て頂いて…!!pq
      本当に有り難うございます♥

      ヒョクチェの猫力は、ミンウクの女子力と張り合えますね!!
      私、実家では猫を飼ってるんですが、もうあの奔放さと甘えん坊さは完璧。
      ヒョクチェさんに落ちない人って居るのかなあ…
      でも、この回はちょっと久しぶり過ぎて荒ぶりが過ぎたと思うので少し修正しないとと思いました。笑

      他の皆も気になりますよねーー!!
      ちゃんと早くストーリーを回さなければと焦ってきました。くくく!

      削除
  2. 祝・再開!お疲れ様です^^

    やだもう。ニヤニヤが止まらないですこの回。
    ヒョクチェのヤツ…なんですかこの悪いネコぶりは。
    TLで天使だ妖精だと言われているヒョクをたいがいエロい目で見ているワタシ、こういう時のヒョクチェの顔が容易に想像できてしまってつらいですw

    ここからどうやってヒョクチェのトゥルーラブになっていくんだろう?と先が楽しみで仕方ありません。
    それとも本能に生きるヒョクチェはあくまでフィジカルにそれを体現していくんですかねー。

    貴公子の圧倒的な愛も愛おしくて、こちらを読ませていただく前はそれほどでもなかったシウォン氏をどんどん好きになっていくんですけど、その貴公子がヒョクチェを見る目線が自分と同じだなと気づいてちょっとだけ複雑な気持ちですw

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    返信
    1. >arata様

      楽しんで頂けた様で良かったです!!!荒ぶり過ぎて読み返して赤面しちゃいました。
      悪過ぎるネコちゃんヒョクに、私が参ってしまったようです。
      私もarataさんもシウォンさんもただのヒョクペンですねwww

      ヒョクチェは基本的にピュアピュアの本能っ子なので、とトゥルーラブも気付いてしまえば
      目の前なんですけどねー!!
      早く見たいなぁ////←

      シウォン氏に興味もってもらえたとかめちゃくちゃ嬉しい限りです!
      本当に素敵な王子様なので…
      まあ、ヒョクとのビジュアルの良さが一番のポイントですけどね♥
      並ぶと本当に綺麗で…個性派と正統派のバランスが完璧なとこが。

      TOPの正統派美貌とジヨンの個性派の妖艶さに似たものがあるなと、勝手に思っております///

      削除
    2. ヒョクとのビジュアルの良さが一番のポイントってわかりますー!
      この2人が並ぶとホントに完璧に美しくてもう何もいらない!ってなります←
      あれは太古の昔に一つだったものが分かれて、自分の片割れを探し求めて出会った2人ですよ、確実に。

      確かに、GTOPのバランスと似てますよね。容姿もサイズ感も。
      ヒョクチェのピュアで本能的な天然エロはジヨンの色気とはまた違って破壊力抜群ですけれどね///

      削除
    3. >あさみしゃん

      それは…!!!へドウィグアンドザアングリーインチ…!!!???

      削除
  3. 仕事の速さとクオリティの高さに脱帽。
    いつもながらに目に浮かぶ情景が素晴らしい。
    ウォンヒョクペンの本気、cooooooooooooool!

    まず、最初のキュへ、キュミンも切ない。
    まだ事情は明らかではないんでしょうが。
    ふと、パリ、ジャカルタでヘミン事件があったと思いだし、嗚咽が!
    ああ、ギュも気になるし、どんだけトラップしかけてるんですか、あなったって人は。

    そんで、シンドン。リア充のCPを見る冷めた目と笑顔が蘇る。
    Mr.Perfect! にもにやけますね。外面はねwww

    そう言えば、シウォンさん、ヒョクのダンスまだ見てなかったんですね。
    見た後の超笑顔が容易に想像できる。周りを見て!チェ・シウォン! ってなりますね。
    そして、仔猫ちゃんの挑発キターーー!
    ヒョクビッチ最高! 可愛い! エロい!
    キスは何回もしてるのに、うん、まだまだ初々しい。それってすごいことだと思います。
    ロストバージンが来てほしいような、焦らされてしまえばいい、と思うような。

    とにかく、楽しい一日になりました! ありがとうございます、Katieさん!
    身体と変態に気を付けて!

    返信削除
    返信
    1. >LILY様

      いやぁもう荒ぶる欲求をぶつけ続けたら書いちゃってました…
      でも乱文、お恥ずかしい限りです。
      久々って、怖い…!!まとまりがあるものに、それとなく編集しようかなとも思ってます。笑

      そう、そう、そうなんですよっ
      ウォンヒョク夫妻が手を握り合っていたあの時。
      ドンへは縋り付くみたいにソンミンに抱きついていた姿が撮られてんです…T T
      バンコクでは花嫁ヴェールしたソンミンを抱いてたのはドンへでしたし。
      でも二人の表情が、なんだか哀愁を帯びているように見えて。←
      ひいき目ですかね。

      そこいらの関係性も搦められたらとか思ってたりして、コソコソ
      キュヒョンは基本ふわ〜っと自由してました。
      誰のもにもならないのかなとか。
      くふふふふ。

      シンドンは、私にとって常にジャック・ブラックのような微笑ませてくれる存在なので
      お話の中でもそんな、皮肉屋で元気でひょうきんな感じで書けたらなぁと。
      客観的な視線が感じられて、楽しいですよね、こういう役割の人が居ると!

      そうなんですよ。
      シウォンさんヒョクの最強の武器を未だ目にしていなかった。
      そしてまだ、レッスン中のヒョクしか目にしていませんね。

      本気で踊るヒョクチェを、早く見せたい。
      そしてずぶずぶになってほしい。

      ヒョクビッチ、そう、この瞬間に私の文章構成能力が崩壊してほんと自由気侭に書きちぎり
      すぎちゃいました…
      エロ最高!
      まだまだロストバージンしてないので、ああ、楽しみな色々が沢山ありますね!
      あれもこれもまだ…まだ…ヒョクチェにさせたいあれやこれや…
      ああ、立ちくらみ。

      また来週までにガンガン妄想膨らませときます。
      今度はちゃんと構成出来るように。笑

      ではでは!!
      LILYさんも、寒いから風邪とか引かないように気をつけて下さいね///
      明日も滾って行きましょうっ!

      削除
  4. ドンヘとソンミン……切なくて切なくて泣けてきます……(号泣)。

    キュヒョンの立ち位置が読めずに、ついイラッときてしまうww

    何でしょう……?お子様のキュヒョンが、子ども独特なやり方で、傷口を更に抉り取るような毒を吐く……

    Katieさんのスパイスが効きすぎて、腹立たしいけど目が離せない……

    私、完全にKatieさんの罠に囚われてしまった感じです(汗)。


    思えば……シウォンは、ヒョクのダンスを目にしたことが無かったんですね~。

    Katieさんの踊りの描写が、あまりにリアルで……

    もしやKatieさん自身がダンサーなのではないかと疑ってしまいそうですww


    ヒョクの挑発エロ過ぎ……

    朝から鼻血が止まりません……

    何とかしてください……www


    ヒョクがロストバージンしたら、私……出血死するかもしれません(爆)!!

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    1. >adelaide様

      キュヒョンさん♥

      キュヒョンさんの顛末、ご覧になって頂けたでしょうか?色々瓦解していたら良いな。

      この子はそういう子なんです(笑)
      スジュに入る時もみんなに反対されて、嫌われて入ったようなものだし
      人をイラッとさせる何かを持ってるんです。
      でも人一倍繊細で、皆が大好きで、温かい子なんだと、寂しがりやで情熱家なんだと
      少しずつ気付いて行きます。

      生々しく表現したかったので、良い所なんて書いてやりませんでした。笑


      ヒョクのダンスシーン、大好きな所です!!!
      描写が楽しくて!!
      どれだけ躍動感を出せるかという戦いでした。

      言葉との戦いは、沢山すればするほど精度が上がって行くので大好きです////
      このテンションがシェア出来たと…受け取っていいですか…??////

      ヒョクのロスとバージン、秒読み、で・す・よ♥

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