2013年2月19日火曜日

Happy Together vol.29











Happy Together vol.29

♦27と同じ要領で、記事内のLINK先を是非ご覧になって、音楽と一緒にどうぞ!
































————ステージに、一人、立つ。



カルメンの演舞を終えて、肩で息をついて。




ライトが、肌にピリと熱く。
眩しくて、慣れない。




————でも、好きだ。




ここが俺の場所だと、思う。




貰った熱情の全てをこの身体に覚えさせたよ。




お前はもう、俺の一部だ。

俺は、変化したと思う。

シウォンと融合して行くみたいに、気持ち良くて。

踊る快感に飲み込まれそうで。



———気持ち良過ぎて、泣きそうになった。



ライトの光に包まれて、お前の愛を体に宿して踊った。


お前のホセを踊りながら、こんな風に愛した人になら殺されても良いと思えた。


その瞬間に俺は、殺されるホセであって、カルメンで。


カルメンは心変わりしたわけじゃなくて
本当の愛を見たんだよ。


だからその愛を自分の好きなようにしたかった。


消える前に握りつぶしたかった。
全てを自分に取り込む為に、想いも、時間も、命も。



今ならわかる。

———完全な融合と、愛。




狂ってるのかな?

でも俺は、お前のClarityなんだ。







音楽が、始まる。












昨日の間に通知が来ていた。

審査の演目が追加、音源を持ってくる事、練習は無用、即興ダンス。




昨日遅くまでシウォンと一緒に考えた。



シウォンが勧めてくれたこの曲を、俺は踊る。



「この曲は、君だ。」



そう言って、聞かされた音源。


踊れる。


全身が喜んだ。


シウォンと出逢わなければ、一生理解して踊る事なんて出来なかっただろう。


———ああ。






—————音楽が始まった。




ヒョクチェは、ステージの中心から少しだけ退いて立った。







♪High dive into frozen waves where the past comes back to life
(凍てつく波間に飛び込む  思い出したくない過去が俺を苦しめる)


頭を大きく振ると身体からジャケットを剥ぎ取り、海に投げ捨てる


Fight fear for the selfish pain and it's worth it every time 
(自分だけ傷つきたくない そう恐れる気持ちを振り切れたら その苦しみにも意味はある)


そして、体を抱きしめて凍てついた床にヒョクチェは膝をついた

祈る様に両腕を突き上げてスポットライトに手を広げて
その光の粒子を胸元へと引き摺り下ろす

膝をついた場所から氷にどんどん皹が入って行く


Hold still right before we crash cause we both know how this ends 
(クラッシュの瞬間 じっとして固く目を閉じる だって俺たちはふたりとも
この先がどうなるのか知っているから)


静止、静寂が

俺の内側で

クラッシュ、する


Our clock ticks till it breaks your glass and I drown in you again 
(俺たちの時は刻まれていく お前を守るガラスが壊れるまで 
そして俺はまたお前に溺れ沈んでいく)


胸が、天から何かに吊り上げられるように時の打刻に合わせて
どんどん持ち上がっていく


吊り上げられる人形のように、少しずつ立ち上がる


———そして、俺を囲んでいたガラスのケースは割れる


Cause you are the piece of me 
(お前は俺の一部なんだ)
I wish I didn't need 
(お前が必要じゃなかったらどんなによかったか)
Chasing relentlessly Still fight and I don't know why 
(無我夢中で追いかけて 争いまでして 自分でもどうしてかわからない)


———粉々に!

弾かれたように、人形はガラスを割って飛び出す

手が、足が勝手に動く

聞こえるかよ、シウォナ

見えるかよ

この腕はお前のだ、こうやって俺の首から、頭から、頬までを触れずに
肌の表面を、滑って行く

もう、俺はお前の一部なんだ


If our love is tragedy
(俺たちの愛が悲劇だというなら)
why are you my remedy 
(どうしてお前は俺の傷を癒せるんだ)
If our love's insanity
(俺たちの愛が狂ってるというなら)
why are you my clarity 
(どうしてお前はそんなに澄み切って美しいんだ)


こんな風に、身体が勝手にスナップして

腰が跳ねる

胸が跳ねる

足は床を滑るみたいにお前に引き寄せられて

俺の手はお前をこんな風に手招きしてる

お前が俺の悲しみを癒すみたいに、俺を綺麗だって言うように



————俺も、同じように想ってる。



walk on through a red parade and refuse to make amends 
(頑なな世間の人混みを通り抜ける 悔い改めたりなどしない)


シャツのボタンを引き千切って、ヒョクチェは観客の前に心を晒す


It cuts deep through our ground and makes us forget all common sense 
(この思いは俺たちのいるこの場所を深く切り裂いて他人が押し付ける常識を忘れさせる)


シウォンの手が心臓の所を、こうやって割り開いて

その愛で、新しい世界を俺に与えてくれる


Don't speak as I try to leave cause we both know what we'll choose 
(俺が離れようとしても声を立てないで 俺たちがこれからどんな道を選ぶかはわかってるだろ?)


声にならない声でヒョクチェは叫ぶ

腕で空気を切って、足はどこまでも遠くに駆け抜けて行く

ステップを踏んで行ける

感じるだろ?


If you pull, then I'll push too deep and I'll fall right back to you 
(お前が引くなら 俺はさらに押すそして迷わずにお前のもとに落ちていく)


ほら、こんなに激しく腕も脚も躰ごとお前の元に落ちて行く

顔の前にそっと翳した人差し指は、約束の証


Cause you are the piece of me 
(お前は俺の一部なんだ)
I wish I didn't need 
(お前が必要じゃなかったらどんなによかったか)
Chasing relentlessly Still fight and I don't know why 
(無我夢中で追いかけて 争いまでして 自分でもどうしてかわからない)


ガクガクと、何度も足元から崩れて行くんだ

でも、ほら、こうやって俺の手はお前の手を掴む

この手が掴むものがお前じゃなかったら

きっとこんなに苦しい想いをしなくて良かった

きっと平穏だった

でも掴んでしまった、知ってしまった!


If our love is tragedy
(俺たちの愛が悲劇だというなら)
why are you my remedy 
(どうしてお前は俺の傷を癒せるんだ)


自分の心を守るよりもっと大事なもの見つけた

これが悲劇でも良い

何度でもこうやってお前をたぐり寄せるから

…傷ついた時はまた癒してくれよ


If our love's insanity
(俺たちの愛が狂ってるというなら)
why are you my clarity 
(どうしてお前はそんなに澄み切って美しいんだ)


この頼りない身体を

自分の腕で抱きしめる

でも今はそれに重なっているお前の手を感じてる。



———見てるか、シウォン


この手は、今お前に向かって伸びてるんだよ。


何度でも、何度でも


重なってるだろ、お前と俺の手の平が。



なあ、もうずっと、重なってたんだろ



これまでも、これからも————








そういう、運命だったんだ――――俺達。
















———気が付いたら、音楽が終わっていた。




客席を見ると皆が立ち上がっていて、一際背の高いシウォンを自然と見つける。


それから、ドンへ。




心臓が”ドクン”と大きく脈打つ。


———俺の気持ち、これが今は全てなんだ。


もう、謝らない。

ただ、ありがとう。


来てくれて、最後まで今の俺の姿を見届けてくれて。






聴覚が戻って来て、耳が割れる程の拍手がヒョクチェの脳に届いた。


審査員席も、皆立ち上がって拍手をしていた。


立ち尽くすヒョクチェに、タオルが渡される。


ああ、汗でびしゃびしゃだし、なんだ———



俺、泣いてたんだな。



我に返って初めて気付く。



それから、シウォンがステージの下まで歩いて来ているのが見えた。



係員が止めるのも聞かずに、真っすぐに。

ゆっくりとステージの下へと歩いて来た。



そして、腕を広げて、今ヒョクチェを待っている。



バックステージに捌けて下さい、と言う女性が視界に入る。



俺は、一つ女性にすみませんとお辞儀をした。



————もう、何も考えなかった。



ステージに手をついて、両足でシウォンに飛びつく。

支えてくれる両腕がそこにある。

こうやって、何の心配もせずに、全部預けられるんだ。



————たまらないだろ。


全部、お前は俺の全てを引きずり出した。



ヒョクチェは、シウォンの首に両腕を回してしがみつく。



シウォンが嬉そうに、頭を撫でてヒョクチェの瞳を覗き込んだ。


「You are my clarity」


綺麗な英語で、そう言った。


「ヒョクチェ、皆が待ってる。」


笑って、客席の方に歩き出す。


会場中の視線を集めたまま。


何も気にしない、王者のように、俺のライオンはどこまでも。


ヒョクチェは思い切りシウォンの首を引き寄せた。




「もう言わないからな、しっかり聞けよ。」




シウォンの耳元にヒョクチェは口を寄せる。






「————愛してる」






心臓が、止まりそう。





ヒョクチェはシウォンの肩に思い切り頭を押し付けて顔を隠す。




シウォンの歩みが止まり会場が暗転する。
次の準備に入るのだろう。



そこは、俺たちだけの闇。



確かにその時、その世界には二人しか居なくて。



シウォンの肩が緊張して強張っている。



そして、震えた声で、呟いた。


「———本当に?」



ああ、もう、お前にはそういうの似合わないから堂々としてろよな。



「…ああ」


「俺、お前が好きだよ。愛してる…」



シウォンがヒョクチェを強く、強く、掻き抱いた。



「…っ、あ、りがとう。ヒョクチェ…ありがとう」



まるで、時を止めようとしているみたいな力強さで。



俺は、そっと床に足をついてシウォンの腕をほどく。



「どこにも行かないから、大丈夫。」



そう言って、静かに涙を流すシウォンの手を握って歩いた。




————今は、俺が導いてやる。



席で立ったままの皆に「出よう」と合図をすると
ヒョクチェはシウォンの手を引いてホールの扉を開ける。




白昼の、真っ白な光が衝撃的な強さで俺達を貫いた。



新しい世界に足を踏み出すみたいに、一歩、外へ出る。



連れていくから。



お前も、皆。



一緒だ、ずっと。



何も追いつけないような速度で、俺は。








To be continued...



2013年2月18日月曜日

Happy Together vol.28









Happy Together vol.28













眩しい。


曇天、が、俺の曇天が。


目の前の眩しい光景に、イェソンはつい息を呑んで目を眇める。




———ヒョクチェが、初めて見る男を連れて店に入って来た。

いつも通り、店を閉めてリョウクの店に居座っていたイェソンは、隅のテーブルから

席に着いた二人をまじまじと眺めていた。



———なんだこいつら。



強烈な眩しさを伴ってそこに座っている二人から目が離せない。

初めて見たって事は、長い付き合いではない筈だ。


先に店に足を踏み入れたとても長身の…ラフな格好だけれど異常に品が漂う
シウォンと名乗った、その男は。

美しく破顔して笑うと、初めましてと言い強い握手で挨拶をした。

隣りに立つヒョクチェは、なんだか嬉しそうに微笑んでいた。


奥から出て来たリョウクにも簡単にヒョクチェから紹介がされて、ぶんぶんと
振り回すような握手をリョウクにもぶつけると幸せそうにヒョクチェを見ていた。


リョウクはぽかんと口を開け、シウォンを見ていて、ヒョクチェは全く
俺達のそんな様子にも気付かずに明日のオーディションは公開だから良かったら
見に来てと言って席に着く。


分かるだろう、これは。


チラリ、とイェソンは奥を振り返ってリョウクを見やる。


リョウクも二人を見ていたのか、イェソンと目が合うとそそくさと料理に
戻った。


…だよな。


何が起きたのかは分からないけれど、猛烈な愛情のオーラに気圧された。


そういう事だろう。


どんな関係性に落ち着いているのかは分からないけれど、これは。


ちらほらと、二人の席からドンへ、という名前が聞こえては声のトーンが
下がったり上がったりしていた。


ヒョクチェは黙り、神妙な顔をしている。


シウォンは優しく微笑んで、ヒョクチェの頬をそっと撫でた。

その手をヒョクチェはバッと振り払うと、目を白黒させてこちらを確認する。


凝視していたイェソンははっと目を逸らし、リョウクにビール!と頼んだ。


リョウクはうわずった声ではーいと返事をするとすぐにビールを持って出て来た。


———見てたか?


リョウクの目を見て、目線でそう確認する。

リョウクは、小さく頷くとイェソンの肩に手を置いた。

もう片方の手でシーッという合図をすると、首を振って更にジェスチャーをした。

”口出し無用”

そういう事だろう。


分かってるさ。


————これは、並の恋をしている人間には毒だ。


触らぬ神に祟りなし、か。


これじゃあドンへが気の毒だ、何気なくイェソンはそう思う。


俺だって、とイェソンはリョウクの消えた店の奥に一瞬だけ視線を送り目を瞑る。


突然、自分の価値観を蹴散らかされたように感じた。

それ程に圧倒的で。

黙って人を愛する事が、静かに気持ちを燻らせている事が余りに馬鹿らしく感じる。



俺の曇天のように。

静かで穏やかな、世界は…。



まあ、俺には俺のやり方がある。

イェソンはテーブルに肘を載せて頬杖をつくと、一気にビールを飲み干した。


————見守ってやるか。


少し、熱くなった脳味噌で、もう一度二人を眺める。


ヒョクチェが、何やら沢山の紙袋の中を引っ掻き回しながら嬉そうに
笑っていた。



後で、ジョンス兄さん達のとこにも行くんだろうか。

こりゃあ、ひと騒ぎするだろうな、あの人達。

そう思いながら、イェソンはふっと、小さく笑う。


せいぜい冷やかされろ。


くくくっと一人で笑いながら、イェソンはリョウクの作ってくれた特製卵蒸しに
取りかかった。












=================================================










ドンへは、激しく息をつきながら、会場の重い扉を開いた。


入ると、シッと係員の男性から嗜められる。




暗いステージにパッと灯りがつき、そこに立つ一人の男が照らし出された。




—————ヒョクチェ




姿を見ただけで、ドンへの目からは涙が零れそうになる。



————ああ。


ヒョクチェ。


客席から、こちらを見て手招きをしている男に、ドンへは気付く。


「ヒチョルヒョン」


はやく!と口パクで手招きをされてドンへは腰を屈めて客席に走り込む。


審査員が何かをぺらぺらと早口でヒョクチェに伝え、ヒョクチェは
無言で頷いていた。


いくつかの振りを言われるままにやってみせながら、審査員の手が机の紙の上を
走っているのを真剣な目で見ている。



ドンへは席の周りをざっと眺めると、見慣れた顔が並んでいた。


俺の右側からイェソンヒョン、リョウク、その隣り、列の端にシウォン。


「おそいよ〜ドンへ!」
リョウクがいつもの調子で俺を嗜める。

イェソンヒョンは腕を組んだままこちらを見やると、早く座れ、と小さく笑った。

シウォンは、そんなやり取りを見て微笑むと、俺に頭を下げる。
来てくれて有り難う、と言うように。


左側にヒチョルヒョン、ジョンスヒョン、ヨンウニヒョン。

「お前は遅刻すると思ったよ。」
ヒチョルヒョンが、俺の背中を叩きながら笑う。

「ちょっと…頼むよ、静かに話しなよヒチョラ〜」
こそこそと、ジョンスヒョンがヒチョルを小突いた。

ヨンウニヒョンは笑いを堪えるように口角を少しあげて、笑いかけて来る。

その斜め後ろに、ドンヒヒョン。

真っすぐにステージを見て、目を逸らさない。

そして、その隣りに…


————ソンミン。


目が合うと、変わらずふわり、と笑って小さく手を振って来た。


ああ。


胸が、温かくなる。


なんだろう。

ドンへの胸に何かがどっと込み上げて来た。

辛かったのに、皆の顔を見ると嬉しくて泣けて来る。



「おいっ何既に涙ぐんでんだよ!さすがバカだなお前!!」

小さい声でひそひそとヒチョルヒョンが耳元で話しかけて来た。

「ひどい…」

笑って返すけれど、やっぱり涙がこぼれて、ヒチョルが乱暴にそれを拭い

頭をガシガシと撫でてくれる。

「見とけ、ちゃんと。あいつ…凄いぞ。————成長してんな。」


やっぱり、ちょっと見逃したかと、一気に悲しい気持ちに支配される。


行くか、行かないか迷っているうちに時間だけが酷く早く過ぎていて。


遅れてしまった。


「ほら、ちゃんと見ろ」


ヒチョルが前を指差す。

その時目に入ったトゥギヒョンや、他の皆の顔が。

優しく俺を見ていた。


————ステージを見る。


音楽が、始まった。


カルメンから、ドン・ホセ。


…一緒に、練習を見て居た。

穏やかだった頃の、思い出が胸を刺す。




ダンスが始まる。

ヒョクチェの目に火が灯った。




—————成長、している。




ヒチョルの言葉が反芻される。

が、違う。


これは。

”変化”だ。




ヒョクチェが、その自身だけの力で育った訳じゃない。


以前の、静寂と柔軟さが持ち味だったヒョクチェのダンスは、もう無い。
歯止めが利かない程の、感情がそこに溢れていた。


————みんな、感じている。


徐々に圧倒されて始めている。


そしてそれぞれが、そっとシウォンを盗み見るようにチラリと眺めた。
この男が、変えたのか?と。





それ程に、これまでのヒョクチェとは全く別の姿が…ステージの上に、あった。


それは悔しさなんて、吹っ飛ぶくらいの、衝撃だった。









To be continued...






2013年2月17日日曜日

【徒然】27を読む前に。






皆様こんばんは!

ウォンヒョクを見守るガーディアンエンジェルKatieです。

Happy Together第一章(いつの間に章が出来た)終盤に近付いています。



これ以降のウォンヒョクは、ある一曲の音楽を聴きながら書かれています。

それは、Zeddというアーティストの"Spectrum"という曲です。

年末のSM7のPerformaneで皆さんご覧になってお聞きになったかと思いますが


疾走感溢れる一曲です。

この曲には実はあるウォンヒョクな顛末が在ります。

この曲は、Twitter上でシウォンさんが直にこのSpectrumのアーティストZedd氏
とやり取りをし(他にもSkrillexさんともやり取りをしています)
使用にこぎ着けたという始まりがあるのです。

音楽の趣味を共有しているウォンヒョク。
シウォンさんがこの曲で踊りたいというヒョクさんの為に、自分の持てる
英語力や、影響力を使って頑張ったのだと私は思っていて。

凄く美しい曲なんです…。

この曲をウォンヒョクな観点から訳して下さっている方のブログを
以下に載せますね。

My Clarity

こちらのSpectrumの記事に直接飛ぶようにしてあります。

是非ご覧になって下さい。
(他の記事もウォンヒョクにまつわる曲の訳をウォンヒョクの視点から
繰り広げられています!凄く感動的なので全部お勧めです♥)

この世界観なんです。ウォンヒョク。
ずっとこの曲で書いています。

なので、もし可能ならこの曲を聴きながら読んでやって欲しいなって…////

無理なお願いですが。
出来る方だけでも><



彼の世界に突然現われた金髪の異星人。
(Happy Togetherでは天使みたいな存在)

愛おしくて、キラキラしてて。

何があっても離さない!

時速がどんどん上がって行き、どんどん駆け抜けて行く二人だけの世界。

どんな困難(同性である事、であったり)でも。

離さないって、光に追われながら。

最後は彼が彼女を追いかけたって私はそう思っています。

そんな世界を是非共有しましょう/////


私の中の随一のウォンヒョクソングでした。
我が儘をすみません><


有り難うございました!

では、どうぞ引き続きHappy Togetherをお楽しみ頂けると幸いです。


Katie





2013年2月16日土曜日

Happy Together vol.27









Happy Together vol.27
















燕が一羽、ひゅう、と空を旋回した。


見事に雲一つない、美しく水色の空。


シウォンは適当にセットした髪を、思い立ったようにぐしゃぐしゃと掻き回した。
前髪を下ろして、頭を振る。


今日はただのチェ・シウォン。

肩書きを感じさせない自分で居たい。
在りのまま、ただヒョクチェに恋をしているだけの男だ。


それが現在の俺の全て———。




先程目の前のアパートから、小柄な、可愛らしい男性が出て行った。


憂いのある、でもなんだか晴天を瞳に映したような、そんな顔をしていた。

———シウォンはドンへを待っている。


この家に居ると情報を得て、ドンへを捕まえに来た。



何をしているんだろうな、と静かに自嘲に駆られる。
自分の恋敵をご丁寧に、ヒロインの元に招待しようとしているなんて。



だが、決めた事だ。



偽善者だと、人は思うだろうか。

でも俺は、ヒョクチェが笑うのなら、偽善者なんて呼び名だって誇らしい。

…なんと思われたっていい。



所詮、誰も鼻にもかけないような、前途も何も無い恋なんだ。



何も無い。


受け入れられる確信すら、祝福されるような未来も

———思い出に出来る過去も無い。


何も無い。


ただ、愛してる。


そう、ただ、愛してる。



心臓を鷲掴みにされたあの時から。
空から降ってきた天使が目を見開いて、その茶色い瞳が
真っ直ぐに俺を見つめた時から。


光が満ちた。


胸を締め付ける、鼻の奥をくすぐる思いにまた空を仰ぎ見ると

視線の途中のアパートのドアが開くのが目に入る。

空から視線を戻しそこを注視すると、黒いジャケット、黒いデニムの男が
眩しさに手を目の上にかざしながらゆっくりと出て来た。



———ドンへ?



ヒョクチェとの過去と現在から、俺が欲しくてたまらない場所を…
捨てようとしている男。



階段の方に暫く姿が消え、そしてアパートの門からまたゆらりと姿を現す。



———間違いない。


ふう、と一度深呼吸をしてシウォンは祈る。


ぶれるな、と。


腰かけて居たベンチから立ち上がり、こちらの方へ歩いて来るドンへに
向かって真っすぐ近付く。



君を、捕まえるよ。



近付くにつれて、自分の進行方向からやってくる人物にさすがに気付く。

ドンへがシウォンを見つめた。


歩みが止まる。


踵を変えそうかと一瞬迷ったように見えた、が、彼はそこに踏みとどまった。


シウォンは、調子を変えずにゆっくりとドンへの目の前まで歩いて行く。


「…久しぶり、かな?」


シウォンは微笑む。

ドンへが眉をハの字にして何かの言葉を飲み込んだ。


恋敵なのに、守ってやりたくなるような…そんな雰囲気を醸し出すドンへに
シウォンは少し肩の力が抜ける。


ドンへは緊張からか唇を舐めると、目を伏せてもう一度口を開いた。


「…何か…用ですか」


特に乾燥なんてしていないのに、ドンへは全ての言葉が喉に張り付く様に感じる。


「出来れば、カフェか何処かで少しだけ、話がしたいんだ」


シウォンが、街の方を指差して遠慮がちに尋ねる。


「…分かった…」
短く、諦めたようにドンへが呟き、シウォンは目を伏せて微笑むと
街の方へ、どちらからともなく歩き出した。













=================================================












”ヒョクチェ!”



ガラスを叩く音と共に、名前を呼ばれる。


ハッと振り返ると、シウォンがガラスの向こうに立って微笑んでいた。


チカ、チカとシウォンの背景には向かいの店舗のLEDが光る。




ヒョクチェはスタジオから急いで駆け出して、鍵を開けに裏口へ廻る。

扉を開けた瞬間、シウォンが丁度扉の前に来ていた。

ヒョクチェは目の前に出現したシウォンに、ワッ!と小さく声を上げてしまう。



シウォンはなんだか大きな紙袋を沢山脇に抱えていて
何かのTVCMから出て来た理想の父親像みたいだった。


「ヒョクチェ」


嬉しそうな声のトーンで俺を呼ぶ。

また、映画俳優かなにかのような、完璧な笑みを顔中に広げて。


"——ああ''


目から始まり、足の指先まで小さな電流が走った。



—————感情。



ヒョクチェは白い歯をこぼして小さく微笑み返す。

シウォンは少し首を傾げると自分の頭を指さして、ヒョクチェの髪を見た。

「色、変えたの?」

は、とヒョクチェは言われて思いだす。
髪を切り、染めた。
オーディションのために金から黒へ。


「…そう、変?」
頭に手をやって、シウォンの目を見る。


何気なく聞いたが、本当は凄く気になった。
いつもの俺なら、似合うだろ?と言った筈で。

女々しいとつい心の中で舌打ちをする。


…出会った時からユニセックスな髪型だったのを思い切り男っぽくした、から。


少しの、不安。


些細な変化の色を見つけようと、見つめたシウォンの目は少し揺れて
その目尻には小さく皺が浮かび、それから、


「君はどんな姿も似合うな」


恥ずかしそうに、両の口角を思い切り上げてシウォンが言う。


「あ…」



————なんだこれ?



怖い。


くらい、嬉しい。


これが、そういう、事かよ。



———感情の、スペクトラム。


ヒョクチェは顔が徐々に熱くなり、首筋まで真っ赤になっていくのを感じた。


「っ…これは、」


シウォンはヒョクチェの赤面に気付くと、悪戯にウィンクする。


もってかれる!


口は動いても、心が喜びの中に鎮座して動かない。



(シウォンは取り敢えず、ヒョクチェに持って来た明日の為のプレゼントを
何処かに置こうと辺りを見回す)


ふ、とシウォンがヒョクチェに目を戻すと、口に手を当てていたヒョクチェが
シウォンを見た。



———その目が。



茶色く、太陽がなくとも透ける様なその茶色い目が。



スローモーションの様に一度瞬かれ、赤い唇が口が無音で動く。



「     。」



ヒョクチェがゆっくりとシウォンに向かって歩き出す。

唇だけが空気を噛む様に小さく動いて、シウォンの首にその白く長い腕を回した。




————其処に、在った。

たった一晩、会わなかっただけで、強烈に飢餓を覚える程恋しかったシウォンが。

目の前に、存在していた。



優しい、包み込むようなムスクの香りで体中がシウォンに満たされて行く。


緊張————する。



ヒョクチェは、シウォンの瞳を見上げる。

なんだか、もう、無理だな、と思った。

言葉が出なかった。



言葉の代わりに、自分の手がゆっくりとシウォンの頬を撫でる。


シウォンは、どうしたんだ?というような少し困った笑顔で
同じようにヒョクチェの頬に手を添わせた。



”————あいしてる。”



言葉が、こんなにも、重くて、激しいものだったなんて。

バサリと、シウォンの持つ紙袋達が音を立てて落ちた。



好きだ、この腕が。

好きだ、この胸が、腰が、首が、顎が、頬が、瞳が、


心が、好きだ————。


どくん、とヒョクチェの心臓が跳ねる。


一気に頭に血が上る。


光で頭が真っ白だ。


シウォンが腕をヒョクチェの背中に回して、背中を撫で下ろす。




「どうしたんだ、何で泣いてるんだ…。」



シウォンが優しく耳元で囁く。

声にならなかった言葉を、何度も何度も胸の中で繰り返す。

愛してるよ、愛してるからだよ。

でもこんなの重過ぎて、喉の奥から自力じゃ引き上げられないんだ。


「何かあった…?」


シウォンの全てを吸い込む。

優しく囁かれる言葉も、変わらず温かい、香りも。

愛も。



「ヒョクチェ、何を言いたいんだい…」


シウォンの手がまた頬を優しく撫でる。

手伝って、手伝ってくれよ。

俺の喉から引きずり出せよ。


「ヒョク…」


「————腹、減った」


ヒョクチェは思いっきり目を瞑って全てを呑み込むと、笑った。


「…ヒョ」


「明日の為にめちゃくちゃ感情入れて練習してて———
何かお前の顔見て気が抜けた。」


「…ほんとに?」


嘘は、すらすらと出てくるのに。

吐き出したいのに、呑み込む。


「飯、行こう?」

「ああ、いいよ。勿論!」

「行きたい店あるんだ。友達の店。」


離さないから。


伝えられるまで、離さないから、大丈夫。


「OK、行こう。」






———シウォンの車にそのまま荷物を積み、リョウクの店に向かった。

少しずつ。


長くかかるかも、すぐに叶うかも。


必ず、伝えるから。




———さあ、行こう。






To be continued...








2013年2月4日月曜日

Happy Together vol.26









Happy Together vol.26





















巨大な蟻の巣みたいな世界で、忙しく、行ったり来たりしている俺達。
深い、深い地面の底まで、愛情とか、思い出の欠片を運ぶんだ。
死んでしまったそういう物の一部をしょって、俺達の群れが地下へ潜って行く。
そして、何気ない顔をして、地面に戻って来て、また潜る。
自分と糧となる欠片を探して、地上をうろうろ、右往、左往。
どんな欠片だって、ちゃんと、自分や、自分の次の命の、養分になる。
そういう事を、無意識に皆、細胞が知っているから。

変わらず、変わらず。

————そういう世界。













===================================================













「でっかい蟻塚なんだよ。」


「そういう事なの!」


先日見たばかりの、自然番組の内容を反芻しただけの。

ただの番組の受け売りに、思った事を当てはめてみただけだったけれど

ドンへは少し、文学的な気持ちになって口元を緩ませる。

「センチメンタル」

俺にだってあるんだ。


———目の前に座る、イェソンとリョウクが、お互いの目を見合わせて
変な顔をしている。


「…なんだよ。」


イェソンが口を開こうとすると、リョウクがダメっと言うように手で遮る。


「馬鹿にしてる…」

「し、してないよ!ねえ、イェソンヒョン??」


焦ったようにリョウクが言葉を継ぐ。


「ただ、ちょっ…と、大丈夫かなって、ね?」

「お、おう。そうだな…」

「大丈夫だよ、。なんだよ、もう…」

「「……」」


また、二人して口を噤む。


…ヒョクに、こう思うんだって、言いたいな。
笑って、多分、お前も難しい事考えたんだなって褒めてくれる。

俺の唯一無二の、親友。
ヒョクチェ。

俺は、恋人も欲しいし、親友も欲しい。
どっちも俺のもになれば良いのにって、ぼんやりと思っていた。
土深くに、どちらも埋めたくなんて無い。

———今までは。

俺は欲張りだから。

……。


「ドンへ」

イェソンが思い切ったように口を開く。

「何、ヒョン」

「お前、ヒョクチェはどうした。」

「そ…」

それは、と説明しようとして言葉が出て来なかった。

「何か、あったのか。」

ごくり、とドンへは唾を飲み、下を向いてしまう。

「ちょっと、イェソンヒョン…」

「俺、ヒョクチェに好きって言った。」

「「え!!!!」」

二人は同じような声のトーンで驚き、顔を上げると、リョウクは口を抑え
イェソンは頭に両手をやっていた。


———時間が止まっている。


「そんなに意外?」

ちょっとおかしくなって、ドンへはへらっと笑う。

「いや、意外というか」

「それで、うまく行ったのか?」


ドンへは、少し楽しい気持ちになったのに風船がしぼむように気持ちが沈んで行く。


「———ううん…。」


「ヒョクチェ、好きな人が居るみたい———…。」


二人の時間が、また、止まってしまう。
なんと言ったらいいのか、分からないと言うような顔をして。

それでも、口にして、少しだけスッキリした。

一生、誰にも言えないと思っていたから。

「今、家に帰ってないんだ。ヒョクチェに見つかりたくなくて。」

「合わせる顔が、無くて———」

「それでお前、どこに…」

イェソンが言うのと同時に、店の扉が開いて、チリンチリンと鈴が鳴る。

「こんばんはー…ドンへ、居ますか?」

そう言って、ソンミンが顔を出す。

「あ、居た。」

そう言うと、ソンミンの顔に花が咲いたように笑みが広がった。

「ん、ソンミンの家。」

そういうとドンへは椅子から立ち上がり、ひらりと手を振る。

「あ、ご飯はいいの?」

リョウクが心配そうに声をかける。

「大丈夫、久々にゆっくり話せて良かった。気が楽になった」

そう言って、いつものようにドンへが笑う。

「ごめんね、ドンへがここに居るってメールくれた時にはもう夕飯の材料
買っちゃってて、それで——…」

「ああ、気にしないでソンミニヒョン、でもまた来てよね?」
リョウクが顔の前でぶんぶんと手を振ってフォローする。

イェソンは、まだ一点を見つめたまま固まっていた。

ソンミンとリョウクは、まるで主婦みたいに夕飯のレシピについて話していた。

ふと、イェソンに挨拶をしようと目を遣ると、固まって居たイェソンの目線が
自分に向けられるのと同時だった。

”こっちに来い”

口パクでそう言われ、話し込む二人を一瞬見て、イェソンの隣りへと歩いて行った。

耳元で、イェソンが言う。

「傷の舐め合いは、やめとけ」

ハッとして、イェソンの目を見る。

適当に言っているような、目では無かった。

厳しい目で、射抜くようにドンへを見ている。

「治る傷は、ほっておいても治る。治らないのなら、諦めるのも大事だ。」

「傷を勲章にするくらいの気持ちを…男なら持つんだぞ。」

そう言うと、イェソンは手をひらひらと振って行けよ、というように
もうそっぽを向く。

ドンへは、言葉も無く、気持ちが溢れてきそうで一人先に急ぎ足で店を出た。

その後を、急いでソンミンが追って来る。

「…どうしたの?何かあった?」

ドンへは、漆黒の、小さく星がキラキラ輝く空を眺めて、両手で顔を覆った。



同じようにずっと燻っているソンミンと居たら——

楽になれた。

まるで自分と居るみたいだと。
そう思った。


日付が、変わる。



「———なんだか、胸が痛い。」

ソンミンが、小さく呟く。



「誰か、何処かで泣いてるみたい。」



「———ソンミン」


「何?ドンへ」


ドンへは、小さくて温かい、ソンミンの手をそっと握った。


「今日、ご飯作るの、俺も手伝うよ」


「…うん。ありがと。」


手を握ったまま、もう片腕で俺より少し小さいソンミンを包み込み、抱きしめる。

ドンへの首元でソンミンがはふっと息を吐き、ふざけて苦しい、と言った。


「———それで、今夜で終わりにしよう。」


ソンミンのふわふわの髪にそっとドンへは口づける。


「ドンへ、大好きだよ。」

「…俺も。」

「ドンへの好きは、僕のと少し違う」

「違わない。」

「寂しく、なるね。」


暫く、二人はそうやって星を見て、抱き合っていた。


言葉にならない、このまま一生、騙し騙し一緒に居たなら

…きっと愛になる予感を、振り切って。



そうやって、家までの道を、お互いの手の平への安堵感に心を震わせながら
ゆっくりと歩いた。




日付が変わり、また少し、空の闇が深まって。


そして月の灯りは一層明るさを増し


————揺れた。






To be continued....






2013年2月3日日曜日

Happy Together vol.25




Happy Together vol.25







Happy Together vol.25

鍵付き裏小説となります。

パスワードを入力してお進み下さいませ。

奇しくも、キュヒョン聖誕祭に裏キュヒョクとなりました。
お楽しみ頂けたら幸いです。

仕事の都合で更新をお待たせしてしまっており、大変申し訳ございません。涙




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