2013年2月4日月曜日

Happy Together vol.26









Happy Together vol.26





















巨大な蟻の巣みたいな世界で、忙しく、行ったり来たりしている俺達。
深い、深い地面の底まで、愛情とか、思い出の欠片を運ぶんだ。
死んでしまったそういう物の一部をしょって、俺達の群れが地下へ潜って行く。
そして、何気ない顔をして、地面に戻って来て、また潜る。
自分と糧となる欠片を探して、地上をうろうろ、右往、左往。
どんな欠片だって、ちゃんと、自分や、自分の次の命の、養分になる。
そういう事を、無意識に皆、細胞が知っているから。

変わらず、変わらず。

————そういう世界。













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「でっかい蟻塚なんだよ。」


「そういう事なの!」


先日見たばかりの、自然番組の内容を反芻しただけの。

ただの番組の受け売りに、思った事を当てはめてみただけだったけれど

ドンへは少し、文学的な気持ちになって口元を緩ませる。

「センチメンタル」

俺にだってあるんだ。


———目の前に座る、イェソンとリョウクが、お互いの目を見合わせて
変な顔をしている。


「…なんだよ。」


イェソンが口を開こうとすると、リョウクがダメっと言うように手で遮る。


「馬鹿にしてる…」

「し、してないよ!ねえ、イェソンヒョン??」


焦ったようにリョウクが言葉を継ぐ。


「ただ、ちょっ…と、大丈夫かなって、ね?」

「お、おう。そうだな…」

「大丈夫だよ、。なんだよ、もう…」

「「……」」


また、二人して口を噤む。


…ヒョクに、こう思うんだって、言いたいな。
笑って、多分、お前も難しい事考えたんだなって褒めてくれる。

俺の唯一無二の、親友。
ヒョクチェ。

俺は、恋人も欲しいし、親友も欲しい。
どっちも俺のもになれば良いのにって、ぼんやりと思っていた。
土深くに、どちらも埋めたくなんて無い。

———今までは。

俺は欲張りだから。

……。


「ドンへ」

イェソンが思い切ったように口を開く。

「何、ヒョン」

「お前、ヒョクチェはどうした。」

「そ…」

それは、と説明しようとして言葉が出て来なかった。

「何か、あったのか。」

ごくり、とドンへは唾を飲み、下を向いてしまう。

「ちょっと、イェソンヒョン…」

「俺、ヒョクチェに好きって言った。」

「「え!!!!」」

二人は同じような声のトーンで驚き、顔を上げると、リョウクは口を抑え
イェソンは頭に両手をやっていた。


———時間が止まっている。


「そんなに意外?」

ちょっとおかしくなって、ドンへはへらっと笑う。

「いや、意外というか」

「それで、うまく行ったのか?」


ドンへは、少し楽しい気持ちになったのに風船がしぼむように気持ちが沈んで行く。


「———ううん…。」


「ヒョクチェ、好きな人が居るみたい———…。」


二人の時間が、また、止まってしまう。
なんと言ったらいいのか、分からないと言うような顔をして。

それでも、口にして、少しだけスッキリした。

一生、誰にも言えないと思っていたから。

「今、家に帰ってないんだ。ヒョクチェに見つかりたくなくて。」

「合わせる顔が、無くて———」

「それでお前、どこに…」

イェソンが言うのと同時に、店の扉が開いて、チリンチリンと鈴が鳴る。

「こんばんはー…ドンへ、居ますか?」

そう言って、ソンミンが顔を出す。

「あ、居た。」

そう言うと、ソンミンの顔に花が咲いたように笑みが広がった。

「ん、ソンミンの家。」

そういうとドンへは椅子から立ち上がり、ひらりと手を振る。

「あ、ご飯はいいの?」

リョウクが心配そうに声をかける。

「大丈夫、久々にゆっくり話せて良かった。気が楽になった」

そう言って、いつものようにドンへが笑う。

「ごめんね、ドンへがここに居るってメールくれた時にはもう夕飯の材料
買っちゃってて、それで——…」

「ああ、気にしないでソンミニヒョン、でもまた来てよね?」
リョウクが顔の前でぶんぶんと手を振ってフォローする。

イェソンは、まだ一点を見つめたまま固まっていた。

ソンミンとリョウクは、まるで主婦みたいに夕飯のレシピについて話していた。

ふと、イェソンに挨拶をしようと目を遣ると、固まって居たイェソンの目線が
自分に向けられるのと同時だった。

”こっちに来い”

口パクでそう言われ、話し込む二人を一瞬見て、イェソンの隣りへと歩いて行った。

耳元で、イェソンが言う。

「傷の舐め合いは、やめとけ」

ハッとして、イェソンの目を見る。

適当に言っているような、目では無かった。

厳しい目で、射抜くようにドンへを見ている。

「治る傷は、ほっておいても治る。治らないのなら、諦めるのも大事だ。」

「傷を勲章にするくらいの気持ちを…男なら持つんだぞ。」

そう言うと、イェソンは手をひらひらと振って行けよ、というように
もうそっぽを向く。

ドンへは、言葉も無く、気持ちが溢れてきそうで一人先に急ぎ足で店を出た。

その後を、急いでソンミンが追って来る。

「…どうしたの?何かあった?」

ドンへは、漆黒の、小さく星がキラキラ輝く空を眺めて、両手で顔を覆った。



同じようにずっと燻っているソンミンと居たら——

楽になれた。

まるで自分と居るみたいだと。
そう思った。


日付が、変わる。



「———なんだか、胸が痛い。」

ソンミンが、小さく呟く。



「誰か、何処かで泣いてるみたい。」



「———ソンミン」


「何?ドンへ」


ドンへは、小さくて温かい、ソンミンの手をそっと握った。


「今日、ご飯作るの、俺も手伝うよ」


「…うん。ありがと。」


手を握ったまま、もう片腕で俺より少し小さいソンミンを包み込み、抱きしめる。

ドンへの首元でソンミンがはふっと息を吐き、ふざけて苦しい、と言った。


「———それで、今夜で終わりにしよう。」


ソンミンのふわふわの髪にそっとドンへは口づける。


「ドンへ、大好きだよ。」

「…俺も。」

「ドンへの好きは、僕のと少し違う」

「違わない。」

「寂しく、なるね。」


暫く、二人はそうやって星を見て、抱き合っていた。


言葉にならない、このまま一生、騙し騙し一緒に居たなら

…きっと愛になる予感を、振り切って。



そうやって、家までの道を、お互いの手の平への安堵感に心を震わせながら
ゆっくりと歩いた。




日付が変わり、また少し、空の闇が深まって。


そして月の灯りは一層明るさを増し


————揺れた。






To be continued....






9 件のコメント:

  1. お疲れ様でしたm(__)m

    (俺は、恋人も欲しいし、親友も欲しい。
    どっちも俺のもになれば良いのにって、ぼんやりと思っていた。
    土深くに、どちらも埋めたくなんて無い。)

    まず、ここ↑ ドンへだね。ドンへの寂しそうな困り顏が目に浮かんだ。

    あと、兄さんカッコいい・・・。傷の舐めあいとか、この世に溢れているわけで、見て見ぬふりしちゃう人が大半だと思うんだけど・・・。
    後半の、ドンへとミン君の温かい世界も良かった。

    結局、どこも良かった。
    Katieさんのメンバへの愛が、今日はいつも以上に感じたなあ。

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    1. ドンヘは甘えん坊のよくばり、でも執着もそんなになくて、いざ終わったら
      スッと潔い所もあると私は思っている。

      心が純粋過ぎてそうなるんだろうなあと。
      あまりドンヘがいつまでも激しく感情に振り回されるイメージはないんだよね。

      メンバー愛は実はすごく深いからね?←
      皆まんべんなく見てる!発言とか、目線とか、表情。
      みんな素敵過ぎるんだもの。

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  2. うん。ほんと違和感がないんだよね。
    メンバーみんなただ役割に当てはめたんじゃないから、すごくリアリティがあって感情移入しちゃう。
    愛に変わるかもしれないヘミンもちょっとだけ心残りw でももしそうなってもあの2人だとどこまでも哀しさがつきまとうかな。

    忙しいのに早く出せ出せ喚いてごめんねw
    次?のウォンヒョク楽しみだよ♥

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    1. 私ヘミン書いてる時、もっていかれそうになった(笑)

      凄く温かくて切なくて、可愛い二人だったから(இдஇ; )

      もう少し書きたいんだよね、実をいうと。

      どうしようかなあ……悩める。

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  3. 月並みな言葉しか出せなくて申し訳ないのですが
    すごく良いですね。
    冒頭も素敵だし、兄さんかっこいいし
    ドンヘとミン君
    ぴたりとした言葉が見つからないのですが
    可愛いと言うかやさしいと言うか、それこそ手のひらの温かさみたいな感じがしました。

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    1. 有難うございます(´;ω;`)

      それにしてもいつも、がみんさんは的確です。

      掌の温かさを感じられるような描写にしたかったんです。

      いつまでも残るような、優しい温かさ。

      かなりヘミンに持って行かれました…!

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  4. Katieさんこんばんは!
    昨日限定記事のパスワード頂いて、
    読めていなかった部分含め一気に読み返していました。。
    はじめてコメントさせていただきます。モナ子です。

    読んで改めて、私ウォンヒョク好きだと、、
    そしてKatieさんが書かれる文章が好きだと、、
    てゆうかKatieさんが好きだと(…!)
    確信しました。
    こんなに素敵な文章を生み出してくれて
    ほんとありがとうございます〜。


    イスカランディアなんて、全モナ子号泣ですよTTTT
    フィクションであることを忘れて、
    あの3人がその後幸せになってくれる事を
    本気で願ってしまいました。
    世界観とても好きです。

    あとこのHappy Togetherも大好きなんですが、
    みなさんがコメントされてるとおり
    このお話ってウォンヒョクの周りの他のメンバーの描き方も
    すごく良くて、毎回ほんと楽しいです。

    特に前回のキュヒョクのとこで、
    個人的に、私リアルなギュとヒョクの関係性がすごく好きなんですが、
    あの関係性って何て表したらいいのか...
    恋愛じゃないんだけどただの友情とも違うしナァ、
    て感じで自分ではうまく言葉にできなかったんです。
    でも「共犯者」っていうのを読んで、あ、これじゃん、て
    一瞬で納得してしまったんですよね。
    二人だけで分かり合ってる、でも馴れ合わない
    居心地良い関係。油断できない感もあるっていうw
    まじでドンピシャでした。すっごいスッキリ!

    ウォンヒョクについてはもう、、
    いついかなるときもエロく可愛く美しいヒョクチェと
    どう育てばそんな完璧に仕上がるのって白目むくしかないシウォン。。
    最高です。Katieさんの表現力に乾杯です。
    なんかもう好きすぎて語れないという始末w


    長々とすみません!
    コメントとかあまりした事がないので
    所々おかしかったり気持ち悪かったりすると思いますが
    (コメント欄にいるみなさん、ほんとおもしろいすね...)
    また来ます。

    がんばってください〜♫

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  5. 「治る傷は、ほっておいても治る。治らないのなら、諦めるのも大事だ。」

    「傷を勲章にするくらいの気持ちを…男なら持つんだぞ。」

    もう!もう!ここ泣きました!!
    兄さんカッコ良過ぎるっ!!
    そしてヘミン!ヘミン!!
    可愛くて泣きました・・・しあわせになって欲しいよぉ!!

    Katieさんの文章、心に残りすぎて1日中反芻しちゃったりします。

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  6. 恋をしました。
    katieさんのイェソンに。

    自分自身を抱きしめる行為の様だった二人。
    そのケジメのつけ方も・・・かっこいい!!

    苦しいけど、病みつきです。
    続き楽しみしていますね。

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