2013年2月19日火曜日

Happy Together vol.29











Happy Together vol.29

♦27と同じ要領で、記事内のLINK先を是非ご覧になって、音楽と一緒にどうぞ!
































————ステージに、一人、立つ。



カルメンの演舞を終えて、肩で息をついて。




ライトが、肌にピリと熱く。
眩しくて、慣れない。




————でも、好きだ。




ここが俺の場所だと、思う。




貰った熱情の全てをこの身体に覚えさせたよ。




お前はもう、俺の一部だ。

俺は、変化したと思う。

シウォンと融合して行くみたいに、気持ち良くて。

踊る快感に飲み込まれそうで。



———気持ち良過ぎて、泣きそうになった。



ライトの光に包まれて、お前の愛を体に宿して踊った。


お前のホセを踊りながら、こんな風に愛した人になら殺されても良いと思えた。


その瞬間に俺は、殺されるホセであって、カルメンで。


カルメンは心変わりしたわけじゃなくて
本当の愛を見たんだよ。


だからその愛を自分の好きなようにしたかった。


消える前に握りつぶしたかった。
全てを自分に取り込む為に、想いも、時間も、命も。



今ならわかる。

———完全な融合と、愛。




狂ってるのかな?

でも俺は、お前のClarityなんだ。







音楽が、始まる。












昨日の間に通知が来ていた。

審査の演目が追加、音源を持ってくる事、練習は無用、即興ダンス。




昨日遅くまでシウォンと一緒に考えた。



シウォンが勧めてくれたこの曲を、俺は踊る。



「この曲は、君だ。」



そう言って、聞かされた音源。


踊れる。


全身が喜んだ。


シウォンと出逢わなければ、一生理解して踊る事なんて出来なかっただろう。


———ああ。






—————音楽が始まった。




ヒョクチェは、ステージの中心から少しだけ退いて立った。







♪High dive into frozen waves where the past comes back to life
(凍てつく波間に飛び込む  思い出したくない過去が俺を苦しめる)


頭を大きく振ると身体からジャケットを剥ぎ取り、海に投げ捨てる


Fight fear for the selfish pain and it's worth it every time 
(自分だけ傷つきたくない そう恐れる気持ちを振り切れたら その苦しみにも意味はある)


そして、体を抱きしめて凍てついた床にヒョクチェは膝をついた

祈る様に両腕を突き上げてスポットライトに手を広げて
その光の粒子を胸元へと引き摺り下ろす

膝をついた場所から氷にどんどん皹が入って行く


Hold still right before we crash cause we both know how this ends 
(クラッシュの瞬間 じっとして固く目を閉じる だって俺たちはふたりとも
この先がどうなるのか知っているから)


静止、静寂が

俺の内側で

クラッシュ、する


Our clock ticks till it breaks your glass and I drown in you again 
(俺たちの時は刻まれていく お前を守るガラスが壊れるまで 
そして俺はまたお前に溺れ沈んでいく)


胸が、天から何かに吊り上げられるように時の打刻に合わせて
どんどん持ち上がっていく


吊り上げられる人形のように、少しずつ立ち上がる


———そして、俺を囲んでいたガラスのケースは割れる


Cause you are the piece of me 
(お前は俺の一部なんだ)
I wish I didn't need 
(お前が必要じゃなかったらどんなによかったか)
Chasing relentlessly Still fight and I don't know why 
(無我夢中で追いかけて 争いまでして 自分でもどうしてかわからない)


———粉々に!

弾かれたように、人形はガラスを割って飛び出す

手が、足が勝手に動く

聞こえるかよ、シウォナ

見えるかよ

この腕はお前のだ、こうやって俺の首から、頭から、頬までを触れずに
肌の表面を、滑って行く

もう、俺はお前の一部なんだ


If our love is tragedy
(俺たちの愛が悲劇だというなら)
why are you my remedy 
(どうしてお前は俺の傷を癒せるんだ)
If our love's insanity
(俺たちの愛が狂ってるというなら)
why are you my clarity 
(どうしてお前はそんなに澄み切って美しいんだ)


こんな風に、身体が勝手にスナップして

腰が跳ねる

胸が跳ねる

足は床を滑るみたいにお前に引き寄せられて

俺の手はお前をこんな風に手招きしてる

お前が俺の悲しみを癒すみたいに、俺を綺麗だって言うように



————俺も、同じように想ってる。



walk on through a red parade and refuse to make amends 
(頑なな世間の人混みを通り抜ける 悔い改めたりなどしない)


シャツのボタンを引き千切って、ヒョクチェは観客の前に心を晒す


It cuts deep through our ground and makes us forget all common sense 
(この思いは俺たちのいるこの場所を深く切り裂いて他人が押し付ける常識を忘れさせる)


シウォンの手が心臓の所を、こうやって割り開いて

その愛で、新しい世界を俺に与えてくれる


Don't speak as I try to leave cause we both know what we'll choose 
(俺が離れようとしても声を立てないで 俺たちがこれからどんな道を選ぶかはわかってるだろ?)


声にならない声でヒョクチェは叫ぶ

腕で空気を切って、足はどこまでも遠くに駆け抜けて行く

ステップを踏んで行ける

感じるだろ?


If you pull, then I'll push too deep and I'll fall right back to you 
(お前が引くなら 俺はさらに押すそして迷わずにお前のもとに落ちていく)


ほら、こんなに激しく腕も脚も躰ごとお前の元に落ちて行く

顔の前にそっと翳した人差し指は、約束の証


Cause you are the piece of me 
(お前は俺の一部なんだ)
I wish I didn't need 
(お前が必要じゃなかったらどんなによかったか)
Chasing relentlessly Still fight and I don't know why 
(無我夢中で追いかけて 争いまでして 自分でもどうしてかわからない)


ガクガクと、何度も足元から崩れて行くんだ

でも、ほら、こうやって俺の手はお前の手を掴む

この手が掴むものがお前じゃなかったら

きっとこんなに苦しい想いをしなくて良かった

きっと平穏だった

でも掴んでしまった、知ってしまった!


If our love is tragedy
(俺たちの愛が悲劇だというなら)
why are you my remedy 
(どうしてお前は俺の傷を癒せるんだ)


自分の心を守るよりもっと大事なもの見つけた

これが悲劇でも良い

何度でもこうやってお前をたぐり寄せるから

…傷ついた時はまた癒してくれよ


If our love's insanity
(俺たちの愛が狂ってるというなら)
why are you my clarity 
(どうしてお前はそんなに澄み切って美しいんだ)


この頼りない身体を

自分の腕で抱きしめる

でも今はそれに重なっているお前の手を感じてる。



———見てるか、シウォン


この手は、今お前に向かって伸びてるんだよ。


何度でも、何度でも


重なってるだろ、お前と俺の手の平が。



なあ、もうずっと、重なってたんだろ



これまでも、これからも————








そういう、運命だったんだ――――俺達。
















———気が付いたら、音楽が終わっていた。




客席を見ると皆が立ち上がっていて、一際背の高いシウォンを自然と見つける。


それから、ドンへ。




心臓が”ドクン”と大きく脈打つ。


———俺の気持ち、これが今は全てなんだ。


もう、謝らない。

ただ、ありがとう。


来てくれて、最後まで今の俺の姿を見届けてくれて。






聴覚が戻って来て、耳が割れる程の拍手がヒョクチェの脳に届いた。


審査員席も、皆立ち上がって拍手をしていた。


立ち尽くすヒョクチェに、タオルが渡される。


ああ、汗でびしゃびしゃだし、なんだ———



俺、泣いてたんだな。



我に返って初めて気付く。



それから、シウォンがステージの下まで歩いて来ているのが見えた。



係員が止めるのも聞かずに、真っすぐに。

ゆっくりとステージの下へと歩いて来た。



そして、腕を広げて、今ヒョクチェを待っている。



バックステージに捌けて下さい、と言う女性が視界に入る。



俺は、一つ女性にすみませんとお辞儀をした。



————もう、何も考えなかった。



ステージに手をついて、両足でシウォンに飛びつく。

支えてくれる両腕がそこにある。

こうやって、何の心配もせずに、全部預けられるんだ。



————たまらないだろ。


全部、お前は俺の全てを引きずり出した。



ヒョクチェは、シウォンの首に両腕を回してしがみつく。



シウォンが嬉そうに、頭を撫でてヒョクチェの瞳を覗き込んだ。


「You are my clarity」


綺麗な英語で、そう言った。


「ヒョクチェ、皆が待ってる。」


笑って、客席の方に歩き出す。


会場中の視線を集めたまま。


何も気にしない、王者のように、俺のライオンはどこまでも。


ヒョクチェは思い切りシウォンの首を引き寄せた。




「もう言わないからな、しっかり聞けよ。」




シウォンの耳元にヒョクチェは口を寄せる。






「————愛してる」






心臓が、止まりそう。





ヒョクチェはシウォンの肩に思い切り頭を押し付けて顔を隠す。




シウォンの歩みが止まり会場が暗転する。
次の準備に入るのだろう。



そこは、俺たちだけの闇。



確かにその時、その世界には二人しか居なくて。



シウォンの肩が緊張して強張っている。



そして、震えた声で、呟いた。


「———本当に?」



ああ、もう、お前にはそういうの似合わないから堂々としてろよな。



「…ああ」


「俺、お前が好きだよ。愛してる…」



シウォンがヒョクチェを強く、強く、掻き抱いた。



「…っ、あ、りがとう。ヒョクチェ…ありがとう」



まるで、時を止めようとしているみたいな力強さで。



俺は、そっと床に足をついてシウォンの腕をほどく。



「どこにも行かないから、大丈夫。」



そう言って、静かに涙を流すシウォンの手を握って歩いた。




————今は、俺が導いてやる。



席で立ったままの皆に「出よう」と合図をすると
ヒョクチェはシウォンの手を引いてホールの扉を開ける。




白昼の、真っ白な光が衝撃的な強さで俺達を貫いた。



新しい世界に足を踏み出すみたいに、一歩、外へ出る。



連れていくから。



お前も、皆。



一緒だ、ずっと。



何も追いつけないような速度で、俺は。








To be continued...



9 件のコメント:

  1. 本当に圧倒されすぎて、何度読んでもコメントに困ってしまう。
    まるで、すぐそばで二人を見守ってきたかのような細かく、おそらく事実から察知して熟考して生まれた言葉たち。

    思えば、長く見守ってきたんだもんね。

    ウォンヒョクの互いがそれぞれのClarityであり、高め合い、引きずりだされていく、最高の関係が、私のClarityであり、今の生きる糧とも言える。

    本当に、こんなつまらないコメントしか言えないけど、奇跡なんだよな。

    全ての偶然と必然と、それぞれの「好き」が全て一緒になって、この物語と、バックグランドと、なにもかもが輝きすぎて、目が眩むよ。

    萌えとかじゃなく、これは、もっと輝くもの。ありがとうね。

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    1. LILYさん

      遅いコメントで、今更でも返したいという自己満足コメント失礼します(´;ω;`)
      結構これ書いていた時、精神的にギリギリな時期でもあったから
      ウォンヒョクはまさに光だった!

      彼らの幸せな姿を見て、キラキラした笑顔を見てると自然とこの回がかけたんだ。
      こういう葛藤、経たのかなあとか考えて。

      LILYさん、つまらないコメントじゃないよ。
      コメント書くのって大変だもの。
      受け取る側で感じたものを言葉にするのってすごく難しいの分かる。
      発信する側はすごく自由で勝手なんだけど、それに対して言葉を紡ぐのは
      とてもスタミナのいることだし。

      いつも本当に有難う。

      自分でいっぱいだったから周りのFFを読みに行けなくて、ぐずぐず二の足踏んで
      自分に籠っていたけど、そろそろやっとLILYさんのとこの子達をガーッて読もうと
      思ってる♡

      そしたら長文コメント、めちゃくちゃだと思うけどお見舞いするから
      待っていてね(*˘︶˘*).。.:*♡

      本当に、いつも読んで頂けて有難うございます!
      サランヘヨ!

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  2. 本当は、何度もコメントを書こうと来ては、その度に尻尾を巻いて逃げ帰りました。

    「Perfect」の文字しか浮かばなかったので

    LILYさんのコメントを読んで、私だけではなかったことに少し安堵し、かつ、最後の一文に納得。
    (LILYさん、勝手にすみません。)

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    1. >がみんさん

      がみんさんがみんさん、お元気ですか??
      今更の遅いコメント申し訳ありません(´;ω;`)

      今更でもお返事したい気持ちで、自己満足な行為ですがお許しくださいませ…

      本当にいつも読んで頂いて、ありがとうございます。
      がみんさんから頂けたコメントは全て嬉しくて、Perfectだなんて、その一言だけでも
      書いてよかった感満載です。

      これまでもずっとがみんさんのお声が書いている力になっていました(*˘︶˘*).。.:*♡

      本当に有難うございます!
      また、ここでお会いできる事を祈って…><

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  3. なんにも言えない。

    かっこいい。

    映像にして・・・ひっそりと毎晩みたいです。

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    1. >ぶひひさん

      ぶひひさぁん!

      ありがとございます、HTを続きを書くのですが、新シリーズ
      しょっぱなイェウクですぅ!

      いつか、見ていただける事を祈っております(இдஇ; )

      ひー本当に遅いコメントに、どの面下げてですが……

      ぶひひさん宅もお邪魔しなければ♡

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  4. 3月2日にパスワード請求の件でメールを送らせていただいた163と言います。
    急かすようで大変申し訳ありません。
    メールは届いてますか?

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  5. パスワード届きました。
    ありがとうございました。早速読ませていただきます。(≧∇≦)

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    1. >163様

      有難うございました!

      楽しんで頂けたことを祈っております(*˘︶˘*).。.:*♡

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