2012年8月23日木曜日

Happy Together vol.3




Happy Together vol.3















真っ赤な空、湿度の高い部屋。

熱を持った唇、早鐘の様に鳴り響く心臓。

口を抑えたって、今起きた事を理解して冷静になる事なんて

出来ないのにーーー…。








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「な…… 何、今の」

先に口を開いたのはヒョクチェだった。
尻餅をついたまま、両手で口を覆って顔の下半分が隠れている。
どんな顔をしてるのか、全く分からない。


「すまない」
シウォンは片腕で自分の腰を抱き、もう片方の手で口を覆っていた。
目を瞑り、心底困惑した表情を浮かべている。


「だ、誰かと間違った?とか」
ヒョクチェは震える声を隠そうと、わざと明るい調子で喋る。


「…本当に…すまない。しかし間違ったわけじゃ無い…」
シウォンは、できる限りの誠意を持って応える。


「は…」
それに対して何かを言おうとするが、言葉にならなかったらしくヒョクチェは口を噤んでしまった。
そして無言で立ち上がると、コンロの方に向かいこちらに背を向ける。


「変な冗談やめろよ…ほんと…」

紅潮して赤くなった首を、冷ますようにさすりながら呟いた。







シウォンは考える。
目の前のヒョクチェとは、つい一時間ほど前に出会ったばかりだ。
衝撃的すぎる出会い。
そしてとても…
言葉に出来ないくらい、出会ったばかりの人物に惹き込まれた。

社会勉強?

そんな物じゃなかった。
今俺は、生まれて初めての体験をしているんじゃないのか。
彼が雨の中落ちて来て、この腕に抱きとめた瞬間から。
始まってしまったんじゃないのか?



だったら。



今しなければならない事はー…。






シウォンはその場に膝を付く。

彼を抱きとめた時の様に。


「謝罪させてくれないか。」


優しく、低い声で真っ直ぐにヒョクチェに向かって言う。
ヒョクチェは振り向かない。

「気持ち悪い思いをさせてしまった。」

「今の行為は最低だ。本当にすまない…どうか許してくれないだろうか?」

そう言って手を床に付き、頭を下げようとした時
目の前に白い手が差し出される。


「…似合わないから。」


拗ねた様な、不本意を全力で表現したような顔をして
ヒョクチェが手を差し延べて居た。


「ヒョクチェ…」

「あんたみたいな人にそんな姿は似合わない。やめてくんない。」

「でも謝りたいんだ、本当に。嫌な思いをさせてしまって…」


シウォンの顔に、まだ乾ききらない前髪がはらりと落ちて来る。
どうしようもなく…悲しい表情をしているシウォンに
一瞬ヒョクチェは動揺した。


「べ 、別に嫌な思いとかそういうんじゃなくてさ、意味がわかんないって
いうか…。何がしたかったんだよ…ほんと…」


堰を切るように言葉が出て来る。
「キスとか意味わかんないし、なんで?て言葉しか浮かばないんだけど」


そして少し軽蔑した様な表情を浮かべる。
「あんたそういう種類の人?」


「ヒョク…」


シウォンが喋ろうとしたが、止まらない言葉が徐々に顔を興奮させて
次々に疑問が溢れる。


「大体始めから、そ、そういう相手でも探してたからこんな地域ウロウロしてたとか?」

下唇を噛んで、それから言葉を続ける。
「…俺は一瞬友達になれるかとか思って…」


シウォンは、動揺し切ったヒョクチェの先程まで差し出されていた手を
優しく掴み、伺うようにヒョクチェの目を見つめると…


その白く細い手の甲に、一瞬触れるか触れないかの口付けを落とした。

それは、家臣が主人に対して行う、忠誠の証のような。

王子が姫にする、永遠の愛の証のような。



「ちょっ お前!!何すんだよ!」
反射的にヒョクチェの顔が真っ赤に染まる。
自分の手を掴む大きな優しい手を、ヒョクチェは強く振り切った。



シウォンは悲しそうな顔で微笑む。
「さっきのごめんは、キスにだけじゃないんだ。」




胸が痛い。
心の痛みなんて慣れている。

でも今迄味わった、そのどれとも違っている、凶悪な甘さを秘めた痛み。
その思いだけで、幸せ過ぎて天にも登りそうなのに。
甘い蜜が胸の中で爆発して肺を満たし、ちっとも息が出来ない。

目の前のこの人間に蜜を注ぎ込んで楽になりたい。

どうにかなってしましいそうだ。
爆発しそうだーー…。




「どういう意味」
ヒョクチェが半ば吐き捨てるように言う。
怒っている。
全身の毛を逆立てた猫みたいに、シウォンを威嚇している。
瞳も、先程までのアーモンドではなくなり
きつくこちらを睨みつけて居て。

どうしようもなく魅力的。




シウォンは縋るように、立ち竦むヒョクチェの顔を見上げる。
目と目が合い、シウォンの胸に言いようの無い痛みが、また走った。


ーーーそして。
これ以上無いほどに素直に…

言葉が喉を突いて溢れ出た。


「俺は…君を好きになったみたいなんだ。」

そして
熱くて痛くて疼いていた、シウォンの胸の中で
冷たくて、優しい水が溢れた。

恋とは、こんなに唐突に現れ
それなのに、まるで昔からそこに在る様な顔をして
傍若無人に人を操るのか。



大切な、大切な言葉を
なぞる様に、そこに在る事を確認する様に、もう一度反芻した。

「好き、だ…」

心と喉が解放され、瞳の奥の海が波打つ。

一気に、涙が

静かに零れた。




「好きになってしまって、すまなかったーー…」















To be continued...







2 件のコメント:

  1. うおんうおん…。

    はい、懺悔します。
    1話から読んでました。アーメン。

    もう…うおんうおん(悲鳴にも似た喚き)
    Katieさん、私をウォンヒョクに連れ込む気ですか!!


    あと、ちょっとメッセ送りたいのですが、
    アメーバからだとこちらのブログに飛んでしまうので、
    一度私の方にからメッセ送ってもらってもいいですか??お手数おかけします~><

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    1. はなさん

      うぉん!!ww

      読んでてくれたって事にまず土下座でありがとうございますーー!
      なんてこった!
      読者いんのかコレ状態で淡々と書き続けてたんで、なんか気恥ずかしさと喜びがドバー
      ドバー!

      奮って続き書きますんで、また気の向いた時にでも読んで下さいね♡

      ありがとうございます、幸せでした、ちゅっちゅ!

      あとメッセありがとうでしたー!

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